中小企業のAI導入は何から始める? 消す作業を1つ決めて測る4つの順番
元役員(年商1億→20億)中小企業7社の顧問AI導入のコンサル10件
中小企業のAI導入は、道具選びではなく、消したい作業を1つ決めるところから始めます。そのあと今かかっている時間を測り、その作業にだけAIを当て、もう一度測ります。
私は年商1億円の会社を7年で年商20億円まで育てた元役員で、現在は中小企業7社の顧問です。以前、この順番を逆にして、入れたAIを一度も使わなかったことがあります。この記事では、始める4つの順番と、最初の3か月の進め方、費用の目安を書きます。
AI導入は何から始める? 道具ではなく、消したい作業から
最初に決めるのは、どのAIを使うかではありません。どの作業を消すかです。
道具から入ると、そのあとで使う場面を探すことになります。使う場面が見つからなければ、どれだけよくできた道具でも、開かれなくなります。私は助成金で入れたAIでこれをやりました。何があったかと、どこで間違えたかは、AI導入の失敗事例:助成金で約300万円かけたAIを一度も使わなかった話に書いています。
消す作業が先に決まっていれば、道具はだいたい何でも足ります。社長が触りやすいもので始められます。
始める順番は4つ
地味な4つですが、この順番を崩さないようにしています。
| 順番 | やること | 飛ばすと起きること |
|---|---|---|
| 1 | 消したい作業を1つだけ決める | 使う場面をあとから探すことになる |
| 2 | 今かかっている時間を測る | 「楽になった気がする」で終わる |
| 3 | その作業にだけAIを当てる | どれも中途半端なところで止まる |
| 4 | もう一度、同じやり方で測る | 次に進むか、やめるかを決められない |
1. 消したい作業を1つだけ決める
選ぶ前に、並べます。1週間、終わった作業をその日のうちに書き足していきます。予定表を見ながら書くと、会議と訪問しか出てきません。時間を持っていっているのは、予定表に書かれていない作業のほうです。
書く列は3つで足ります。
- 作業名:「経理」ではなく「A社の請求書を見て、振込データに金額を打ち込む」まで書く
- かかった時間:10分、30分といったざっくりの数字でよい
- 自分がやっている理由:自分しかやり方を知らない、任せると間違いが出る、説明する時間がない、なんとなく昔から、など
書き出したら、次の4つの条件を当てます。4つとも当てはまった作業が、最初に渡す候補です。
| 条件 | 見る理由 |
|---|---|
| 毎週くり返している | 週に1回もない作業は、消えても効きが見えにくい |
| やり方を人に説明できる | 説明できない作業は、人にもAIにも渡せない |
| 社長か幹部がやっている | 時間の単価が高い人の作業から外す |
| お金や人が動くなら、最後の確認を人に残せる | 全部を任せずに済む形にできるか |
いちばん大きな仕事からは始めません。大きな仕事は例外が多く、途中で止まります。顧問先で最初に渡したのも、振込データづくり、入力の転記、LINEの一次返信、面談日の調整といった地味な作業でした。
2. 今かかっている時間を測る
選んだ作業に、今どれだけかかっているかを1週間測ります。1回あたり何分で、週に何回あるか。この2つを紙に書くだけで足ります。
ストップウォッチは要りません。正確さより、入れる前と後で同じやり方で測ることのほうが効きます。
3. その作業にだけAIを当てる
決めた1つにだけ、AIを当てます。ほかにも使えそうだと思っても、いったん我慢します。
出てきたものは、1回で合うことはほぼありません。直した所を毎回書き残して、同じ所を何度も直しているなら、その内容を最初の指示に足します。指示の最後には「渡した事実にないことは書かない。分からないところは【要確認】と書く」の1行を入れています。AIは、それらしい数字や言い回しを足してくることがあるからです。
お金が動く作業なら、AIに任せるのは作るところまでにして、最後の確認は人がやります。作る時間がなくなるだけでも、かなり軽くなります。
4. もう一度、同じやり方で測る
最初に測ったのと同じやり方で、もう一度測ります。減っていれば次の1つに進みます。減っていなければ、指示を直すか、作業の切り方を変えます。
2回直しても減らないなら、その作業は今回は外します。外すのは失敗ではないと私は思っています。
最初の3か月は、週ごとにこう進める
3か月後にあってほしいのは、立派な仕組みではありません。社長か幹部の作業が、1つか2つ、実際に減っている状態です。私は、月に5時間から10時間くらい戻っていれば十分だと考えています。
| 時期 | 週 | やること |
|---|---|---|
| 1か月目:測る | 1週目 | 社長の1週間を、3列で書き出す |
| 2週目 | 4つの条件で仕分けて、候補に線を引く | |
| 3週目 | 1つだけ決めて、今の時間を1週間測る | |
| 4週目 | やり方を口で説明して録音し、文字にして抜けている判断を足す | |
| 2か月目:1つ渡す | 5週目 | 指示文を作る。長く書きすぎない |
| 6週目 | 出てきたものを直し、直した所を記録する | |
| 7週目 | 最後の確認を、どこで誰がやるか決める | |
| 8週目 | 手順書を紙1枚だけ作る | |
| 3か月目:広げるか、やめるか | 9週目 | 同じやり方で、もう一度時間を測る |
| 10〜11週目 | 2つ目の作業を渡す。1つ目の隣にある作業から選ぶ | |
| 12週目 | 担当を社長以外に決める。払っている契約を並べて見直す |
1か月目は、道具を選ばず、契約もしません。測るだけです。4週目にやり方を言葉にできなかった作業は、まだ渡しません。候補の2番目に移ります。
手順書は、どの画面を開いて、何を貼って、出てきたもののどこを確認するか、だけの1枚です。1枚あると、触る人を2人目に増やせます。担当者が抜けたら止まる、という形がなくなります。
2つ目は、1つ目の隣から選びます。振込データづくりを渡したなら、その前にある「届いた請求書の内容を表に書き写す」作業です。同じ材料と同じやり方が使えるので、1つ目より早く進みます。
3か月のあいだにやらないこと
- 道具を増やさない。1つで足りているうちは、2つ目を契約しない
- 全社に広げない。社長と担当者の2人で回る範囲にとどめる
- 長期の契約を結ばない。3か月たてば、何が要るかが分かる
- 始める前に社内で発表しない。減ってから話すほうが引き返しやすい
費用はどれくらい? 最初は1人分の月額から
始めるときに、大きな買い物は要らないと私は考えています。まずは社長か、いちばん作業を抱えている人の1人分から始めます。
たとえばClaudeの個人向け有料プラン(Pro)は、月払いで月20ドルです(税抜。2026年9月30日に公式ページで確認)。私が見てきた範囲では、ChatGPTなどの有料プランも近い価格帯でした。プランの中身も金額も変わるので、契約の前に各社のページで確かめてください。円での金額は為替でも変わります。
人数分を先に契約すると、使う人と使わない人が出ます。1人が使って、消えた作業が1つできてから、2人目に広げます。
その作業にAIを使うかどうかは、次の2つの数字を入口にしています。
- その作業に、月3万円以上かかっているか
- 社内の誰かが、週5時間以上使っているか
どちらかに当たるなら、手をつける価値があると考えています。どちらにも当たらない作業は、今年はお金をかけて手をつけなくていい。外注している仕事のうち、社内に戻していいものと外注のままがよいものの分け方は、外注費のAI削減で内製にしていいもの・ダメなもので書いています。
減った時間も、金額に直して同じ表に並べます。社長の1時間は、自分の役員報酬を時間で割った数でかまいません。「なんとなく楽になった」では、来年の予算に残りません。
止まりやすい場所と、その戻し方
私が相談を受けていて、止まりやすいのは次の4つです。
| 止まる場所 | 戻し方 |
|---|---|
| 「どのAIがいいですか」から始まる | 道具の話をいったん置き、消す作業を1つ決める |
| 3つ4つ同時に始める | 1つ目が減るまで、2つ目に進まない |
| 何から渡すか決まらない | 1週間書き出して並べる。並ぶと選べる |
| 測っていない | 1回何分、週に何回、の2つだけ紙に書く |
道具を先に選んで仕事が減らない会社の共通点は、AIを入れても仕事が減らない会社の共通点にまとめました。こちらの記事は、始める順番に絞っています。
よくある質問
Q. 中小企業がAI導入で最初にやることは何ですか?
1週間、社長が終わらせた作業を書き出すことです。道具を選ぶのは、消したい作業が1つ決まってからで足ります。
Q. どのAIツールを選べばいいですか?
消す作業が決まってから選びます。最初は、社長が触りやすいものの有料プラン1つで足りると私は考えています。AIに作業そのものを任せる始め方は、非エンジニアのClaude Code使い方に書いています。
Q. 社員全員分の契約は必要ですか?
最初は1人分で足ります。1人が使って、消えた作業が1つできてから広げるほうが、止まらずに進みました。
Q. 補助金を使って始めたほうがいいですか?
先に消す作業を決めてから考えます。制度が先に来ると、使わないものを入れてしまうことがあります。デジタル化・AI導入補助金については、申請前に社長が決める3つにまとめました。補助金が使えるかどうかの判断は、支援機関や専門家に確認してください。
Q. どのくらいで効果が出ますか?
私は、3か月で社長か幹部の作業が1つか2つ減っていれば十分だと考えています。減る時間は、作業の中身や会社によって違います。
まとめ
- AI導入は、道具ではなく「消したい作業を1つ決める」ところから始める
- 決めたら、今の時間を測り、その作業にだけAIを当てて、もう一度測る
- 最初の3か月は、測る、1つ渡す、広げるかやめるかを決める、の順に進める
次の一歩として、来週1週間、終わった作業を3列で書き出してみてください。
出典・参考
- Claude プラン・料金(Anthropic/確認日:2026-09-30。表示価格は税抜)
- AI導入は何から始めるか。最初に渡す作業を選ぶ4つの条件(AI参謀のnote)
この話は、noteでも書いています:noteで読む
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