AI導入の始め方と失敗

業務の棚卸しのやり方。AIの前に「週に何回・誰が・何分」を紙1枚で

元役員(年商1億→20億)中小企業7社の顧問AI導入のコンサル10件

業務の棚卸しは、1週間、終わった作業をその日のうちに紙1枚へ書き足し、「週に何回・誰が・1回何分・その人がやっている理由」を並べるところまでです。予定表から書くのではなく、終わった作業から書くのがこつです。現在は中小企業7社の顧問として、AI導入の相談でいちばん長く止まる「何から渡すか」の手前で、この棚卸しをしてもらっています。この記事では、そのまま使えるひな形と、書き方・集計・残った行の行き先を書きます。

業務の棚卸しとは? 選ぶ前に、並べる作業

業務の棚卸しは、何を任せるかを選ぶ前に、今やっている作業を外に出して並べる作業です。AIに渡すのも、人に渡すのも、並んでからの話です。

AI導入の相談で「じゃあ、何から渡しますか」と聞くと、社長はたいてい少し黙ります。そして「いろいろあるんですけどね」と言います。忙しいのも、減らしたいのも本当です。それでも1つを口に出せません。

私はこれを、社長の準備不足だとは思っていません。頭の中の作業は、輪郭がぼやけたまま重なっています。その状態で1つを選べと言われても、選びようがない。だから、選ぶ前に並べます。

書き出すのは予定ではなく「終わった作業」

棚卸しで書くのは、これからやることではありません。もう終わったことです。

予定表を見ながら書くと、会議と訪問しか出てきません。実際に時間を持っていっているのは、予定表に1行も載っていない作業のほうです。

  • 請求書を見ながら、振込データを作る
  • メールで届いたPDFの中身を、表に書き写す
  • 問い合わせのLINEに、とりあえず一次返信を入れる
  • 面談の候補日を送り、返事を待ち、決まった日を伝え、前日にもう一度知らせる

どれも予定表には載らないまま、毎週発生しています。

期間は1週間。月末をまたぐなら2週間

1週間、終わった作業をその日のうちに書き足していきます。夜に思い出して書くと、細かい作業がごっそり抜けます。だから、終わった直後に書きます。

1週間で埋まらなければ、2週間に延ばします。月末と月初でやることが違う会社なら、月末をまたぐ2週間にしたほうが、実際に近いものが出てきます。

道具は紙1枚かスマホのメモ

表計算ソフトでなくてかまいません。私は社長に、机の上にA4を1枚置いてもらうことが多いです。スマホのメモでも足ります。大事なのは、終わったその場で書ける場所にあることです。

そのまま使える棚卸し表のひな形

列は6つにします。私が棚卸しで使っている「作業名・かかった時間・自分がやっている理由」の3列に、あとで集計しやすいよう「誰が」「週に何回」「週の合計」を足した形です。

作業名(動詞と相手まで)誰が週に何回1回何分週の合計その人がやっている理由
(記入例)A社の請求書を見て、振込データに金額を打ち込む社長13030分自分しかやり方を知らない
(記入例)応募者に面談の候補日を送る社長31030分なんとなく昔から

記入例の数字は、書き方を見せるための仮のものです。

紙に写すときは、次の形をそのまま使えます。

業務の棚卸し表(1週間分)
期間:  月  日(月)〜  月  日(日)
書いた人:

作業名(動詞と相手まで)|誰が|週に何回|1回何分|週の合計|その人がやっている理由
1.
2.
3.
4.
5.

【理由の書き方】次の4つから選ぶ。当てはまらなければ自分の言葉で
ア 自分しかやり方を知らない
イ 任せると間違いが出る
ウ 今さら人に説明する時間がない
エ なんとなく昔からそうしている

【書くときの決まり】
・予定表ではなく、終わった作業を書く
・その日のうちに書く。夜にまとめて思い出さない
・時間はざっくりでよい(10分、30分など)

作業名は「動詞と相手」まで書く

作業名は「経理」ではなく「A社の請求書を見て、振込データに金額を打ち込む」まで書きます。粒が大きいままだと、あとで渡せません。

粒が大きい書き方渡せる書き方
経理A社の請求書を見て、振込データに金額を打ち込む
事務メールで届いたPDFの中身を、表に書き写す
問い合わせ対応問い合わせのLINEに、一次返信を入れる
採用応募者に面談の候補日を送り、決まった日を前日にもう一度知らせる

目安は、その1行を読んだ人が「何を開いて、何をするか」を思い浮かべられるかどうかです。

「誰が」は名前か役職で書く

同じ1時間でも、誰の1時間が戻るかで意味が変わります。社長や幹部の手が空けば、その時間を営業や採用に回せます。「誰が」の列があると、あとで仕分けるときに社長と幹部の行だけを拾えます。

時間はストップウォッチなしでいい

1回あたり10分、30分といった、ざっくりの数字で足ります。正確さより、あとで同じやり方でもう一度測れることのほうが効きます。AIを入れる前と後で、同じ表を使って比べるからです。

「その人がやっている理由」の列がいちばん効く

書ける理由は、だいたい4種類です。自分しかやり方を知らない。任せると間違いが出る。今さら人に説明する時間がない。なんとなく昔からそうしている。

私がよく見ているのは、4つ目がいくつ出てくるかです。理由が「なんとなく」のままの行は、その人が続ける理由も薄い、と私は考えています。

1週間たったら、週の合計で並べ替える

書き終わったら、週の合計が大きい順に並べ替えます。月にならすなら、週の合計にだいたい4を掛けます。

並べ替えたら、上から順に次の4つを当てます。

  1. 毎週くり返している作業か
  2. やり方を人に説明できるか
  3. 社長か幹部がやっている作業か
  4. お金や人が動く作業なら、最後の確認を人に残せる形にできるか

4つとも当てはまった行に線を引きます。そこが、最初に渡す候補です。

時間が大きい作業でも、例外が多くて手順を説明しきれないものからは手をつけないようにしています。途中で止まるからです。候補の中から1つを選んで、そこにAIを当てる順番は、中小企業のAI導入は何から始めるかに書きました。この記事は、その手前の棚卸しに絞っています。

線を引けなかった行の行き先

棚卸しをすると、線を引けない行のほうが多く残ります。ここで「うちには向いていない」と閉じてしまわないように、行き先を決めておきます。

残った理由行き先
やり方を人に説明できない自分の口で説明して録音し、文字にして、抜けている判断を書き足す。書けたら候補に戻す
月に1回もない表の下のほうに置いて、今は触らない。渡す準備のほうが時間を食う
外注のままがよい決算とつながる記帳などは、外に残す判断もある
税や契約の判断そのもの税理士・弁護士など専門家の領域として、表から外す

説明できない作業は、渡せないのではなく、順番が来ていないだけです。私がAIに最初に丸ごと渡したのは、会議の議事録でした。録音を文字にして、見やすいページにするところまでです。あのとき、AIに渡せるかどうかは、作業の難しさより、言葉になっているかどうかで決まると分かりました。

外注している仕事も同じ表に並べて、社内に戻すか外に残すかを決めるやり方は、外注費のAI削減で内製にしていいもの・ダメなものにまとめています。

最初の1枚は、たぶん汚い

1週目の表は、きれいに埋まりません。書き忘れが出て、粒の大きさもばらばらになります。それでかまいません。

書き忘れた作業は、来週また発生します。粒が大きすぎた行は、渡そうとした時点で「これは分けたほうがいい」と分かります。

大事なのは、頭の中で重なっていた作業を、外に出して並べたことです。並んだ時点で、「これは自分がやらなくていい」と言える行がいくつか出てきます。机の上のA4が、金曜日には字が小さくなって裏まで回っていることがあります。そうなってから、どれを渡すかの話を始めます。

よくある質問

Q. 業務の棚卸しは、どのくらいの期間やればいいですか?

1週間が基本です。埋まらなければ2週間に延ばします。月末と月初で仕事が違う会社は、月末をまたぐ2週間にすると実際に近くなります。

Q. エクセルで作ったほうがいいですか?

どちらでもかまいません。終わったその場で書けることのほうが大事なので、私は机の上のA4か、スマホのメモをすすめています。並べ替えるときにだけ、表計算ソフトに写せば足ります。

Q. 社員全員にやってもらうべきですか?

最初は、社長か幹部1人分からで足ります。時間が戻ったときの効き目が大きいのは、社長と幹部の作業だからです。1人分で候補が見つかってから、広げるかを決めます。

Q. 棚卸しのあとは、何をすればいいですか?

線を引いた候補から1つだけ選び、今の時間を測ってから、そこにだけAIを当てます。進め方は中小企業のAI導入は何から始めるかに書きました。道具を先に選んで仕事が減らなかった例は、AIを入れても仕事が減らない会社の共通点にまとめています。

まとめ

  • 業務の棚卸しは、予定ではなく終わった作業を、その日のうちに紙1枚へ書き足すところから始める
  • 列は「作業名・誰が・週に何回・1回何分・週の合計・その人がやっている理由」。作業名は動詞と相手まで書く
  • 週の合計で並べ替えて4つの条件を当て、線を引けなかった行にも行き先を決める

次の一歩として、明日の朝、机の上にA4を1枚置いて、終わった作業から書き始めてみてください。

外注コスト診断

浮かせられる外注費と時間を、数字にします

外注している仕事と社長の作業を洗い出し、AIで社内に取り込める業務と、浮く金額・時間をレポートにします。1つも見つからなければ全額返金です。

8,500円(税込)/ビデオ通話60分+診断レポート

お申し込み方法と詳しい条件は、LINEでご案内しています。友だち追加だけ・いつでもブロックできます。

LINEで無料チェックリストを受け取る