生成AIの社内ルールは、A4一枚で足りる。中小企業が先に決める5つのこと
「社員にも使わせたい。でも、情報が漏れるのが怖い」。中小企業の社長から、いちばん多く受ける相談です。分厚い規程は要りません。決めることは5つだけで、A4一枚に収まります。この記事に、その5つと、そのまま使えるひな形を置いておきます。
ルールがないと、何が起きるか
ルールを決めないまま「各自で使ってみて」と言うと、たいてい2つに分かれます。
- 誰も使わない。怒られるかもしれないことは、やらないほうが安全だからです。
- 見えないところで使う。社長が知らない道具に、お客様の名簿や見積書が貼られます。
どちらも、何かが起きるまで表に出ません。ルールは使わせないためではなく、安心して使えるところを決めるために作ります。
先に決める5つのこと
1. 入れてはいけない情報
いちばん大事な1つです。細かく分類せず、3つだけ挙げます。多くの会社は、この3つで足ります。
- お客様と社員の個人情報(氏名と連絡先がそろっているもの、マイナンバー、口座、健康の情報)
- 取引先から預かった資料(図面、原価表、顧客リストなど、秘密保持契約を結んでいるもの)
- まだ公表していない金額や条件(見積もりの金額、契約書の案、これから出す求人の条件)
逆に言えば、それ以外は使ってよい、とはっきり書きます。禁止だけを並べたルールは、使われないルールになります。
2. 使っていい道具
会社として使うサービスを、1つか2つに絞ります。名前も知らない無料アプリに資料を貼るのを防ぐためです。「ここに載っていないものを使いたいときは、先に相談する」と1行足しておきます。
あわせて、使っているサービスの設定画面を一度開いて、入力した内容を学習に使わせない設定があるかを確かめます。サービスや契約プランによって、初めから学習に使わない扱いのものと、自分で設定を変えるものがあります。
3. 確認する人
AIが書いた文章を、誰が確認してから外に出すかを決めます。社員が3人の会社なら「社外に出すものは社長が見る」で十分です。
特に金額・日付・固有名詞・社名は、AIが自然な文章のまま間違えます。読み飛ばしやすいので、ここだけは目で追う、と決めておきます。
4. お客様に出すものの扱い
見積書、提案書、お礼状、求人票。どこまでAIに書かせてよいかを決めます。おすすめは「下書きはAI、最後の判断は人」です。お客様に「AIで書きました」と伝える必要は、基本的にはありません。ただし、お客様の声や実績、写真をAIで作るのは避けます。事実でないものを載せると、景品表示法の問題になります。
5. 困ったときの相談先
「判断に迷ったら、使う前に〇〇さんに聞く」。この1行があるかどうかで、起きることの数が変わります。聞かれた側が怒らないことも、同じくらい大事です。
そのまま使えるひな形(A4一枚)
社名と名前を入れれば、そのまま使えます。言い回しは、社員が読んで分かる言葉に変えてください。
〇〇株式会社 2026年〇月〇日
1.次の3つは、AIに入力しません。
・お客様と社員の個人情報
・取引先から預かった資料
・まだ公表していない金額や条件
これ以外は、仕事に自由に使ってかまいません。
2.会社で使うAIは〇〇と〇〇です。ほかのものを使いたいときは、先に相談してください。
3.社外に出す文章は、〇〇が目を通してから送ります。金額・日付・名前は必ず確かめます。
4.お客様の声、実績、写真を、AIで作ることはしません。
5.迷ったときは、使う前に〇〇に聞いてください。聞いたことで注意することはありません。
※業種によっては、守るべき決まりが追加であります(個人情報を多く扱う仕事、官公庁の仕事、医療・介護など)。心配な場合は、顧問の社労士や弁護士に一度見てもらってください。
よくある失敗
- 他社の規程をそのまま配る。自社にない部署や役職が出てきて、誰も読みません。
- 禁止事項だけを書く。使ってよい範囲が書かれていないと、使われません。
- 作って終わりにする。1回使ってもらい、引っかかったところだけ直すほうが、実際に守られます。
実例:1枚配ったら、使う人が増えた
顧問先に、社員が5人の会社があります。以前は社長だけがAIを使っていました。上の5つを書いた紙を1枚配り、朝礼で読み上げたところ、その月のうちに、事務の方が請求書の案内文を、現場の方が報告書の下書きをAIに書かせるようになりました。禁止の話より、「ここまでは使っていい」と言われたことのほうが効いたそうです。
※顧問先での実例です。結果は会社ごとに異なります。
よくある質問
入力した内容は、AIの学習に使われますか?
サービスと契約プランによって違います。多くのサービスは設定で学習に使わせない選択ができ、法人向けのプランでは初めから学習に使わない扱いのことが多いです。今の設定は、管理画面で確認できます。設定に関わらず、上の3つは入力しないと決めておくのが安全です。
社員が2〜3人でも必要ですか?
必要です。人数が少ない会社ほど、ルールがないまま各自の判断で使い始めます。
ルールを作ると、使われなくなりませんか?
禁止だけを並べるとそうなります。使ってよい範囲を先に書くと、逆に使われるようになります。
まとめ
- 入れてはいけない情報を3つだけ決める
- 使っていい道具を1つか2つに絞る
- 社外に出すものを確認する人を決める
- お客様に出すものの扱いを決める(声・実績・写真はAIで作らない)
- 迷ったときの相談先を1行で決める
この5つなら、1時間もあれば書けます。ルールが決まると、AIの話は「危ないかどうか」から「どの作業を減らすか」に変わります。次はAIを入れても仕事が減らない会社の共通点が近い話です。道具そのものを選びたい方は、ChatGPTとClaudeの選び方をどうぞ。